複視のトレーニング:原因と研究でわかったこと

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緊急性のある複視とは

複視は、脳卒中など重大な問題の兆候であることがあります。米国国立医学図書館のMedlinePlusは、複視がある場合は、たとえ消えたとしても救急医療を受けるよう勧めています。次のような複視では、すぐに911(米国の救急番号。日本では119番)に電話するか、救急外来を受診してください。

  • 顔・腕・脚の脱力やしびれ、話しにくさ、混乱、バランスの喪失とともに突然始まった場合。CDCはこれらを、突然の見えにくさとともに脳卒中の兆候として挙げ、すぐに911に電話するよう勧めています。
  • まぶたが下がる、左右の瞳孔の大きさが違う、激しい頭痛を伴う場合。目と神経の専門家による2026年のレビューは、まぶたの下垂を伴う複視は動眼神経(第3脳神経)麻痺によることがあるとしています。突然の激しい頭痛を伴う場合、原因は動脈瘤の可能性が高く、すぐに救急外来に行くべきだとしています。
  • 頭部外傷の後に起きた場合。英国のNHSは、頭部外傷後の複視、または激しい頭痛や瞳孔の拡大を伴う複視を、999に電話するかA&E(英国の救急サービス)に行くべき理由として挙げています。
  • 目の痛みを伴う場合。MedlinePlusは、どのような複視も救急医療が必要だとしています。NHSは、目の痛みを伴う複視と突然の複視を、当日中に緊急の助けを求めるべき理由として挙げています。

単眼性複視と両眼性複視の違い

眼科医向けの米国眼科学会(AAO)の記事は、ひとつの問いで複視を分類しています。片目を覆うと、二重に見える像は消えるか?

両眼性複視は、両目を開けているときだけ起こります。左右どちらの目を覆っても消えます。両目が同じ場所に向いていないためです。AAOの記事は、頭蓋内の問題を反映していることがあると指摘しています。臨床医は、両眼視機能の評価(英語)の一部として、カバーテスト(英語)などの検査で確認します。

単眼性複視は、もう一方の目を覆っても消えません。片方の目の光学的な問題から生じます。NHSは典型的な原因として、ドライアイ、乱視、白内障、円錐角膜を挙げています。Deutsches Ärzteblatt Internationalの2026年のレビューは、危険なものではないとしています。AAOの記事は、単眼性複視は通常、屈折性(目が光をどう焦点に結ぶかによるもの)であり、眼鏡、コンタクトレンズ、手術などでその目を対象に治療するとしています。

両眼性複視の原因は?

前述の2026年のレビューは、非代償性の潜伏斜視と脳神経麻痺を合わせて症例の約70%を占めると推定しました。次いで眼窩、脳幹、小脳の疾患が続きます。著者らは、これについて住民ベースの研究は存在しないと述べています。よくある原因は次のとおりです。

  • 輻輳不全(CI):近くの作業で両目を内側に寄せにくい状態で、近くでのぼやけや複視の原因になることがあります。
  • 非代償性斜位:ほとんどの人には、脳が抑えている小さな隠れた目のずれがあります。レビューによると、疲れや視力の低下などでその制御が崩れると症状が現れます。
  • 斜視(目の向きのずれ):NHSは、両眼性複視は通常斜視と関連しており、大人ではより重大な病気の兆候のことがあるとしています。
  • 脳神経麻痺:目を動かす第3、第4、第6脳神経の筋力低下です。AAOは、微小血管性のタイプの危険因子として高血圧、糖尿病、喫煙を挙げています。
  • 甲状腺眼症と重症筋無力症:目の筋肉や、神経から筋肉への信号に影響します。AAOは、重症筋無力症はまぶたの下垂も起こしうると指摘しています。
  • 脳震盪:輻輳不全につながることがあります。

輻輳不全による複視の目のエクササイズ

9〜17歳の子ども221人を対象にした2008年の輻輳不全治療試験(CITT)では、週1回の通院訓練と自宅練習を受けた子どもの73%が、12週間後に成功または改善しました。自宅でのペンシルプッシュアップでは43%、自宅でのコンピューター訓練では33%、プラセボの通院訓練では35%でした。2020年のコクランレビューは、大人でのエビデンスを「あまり明確でない」としています。輻輳不全のトレーニングと輻輳不全のゲームのガイドで、これらの試験を詳しく紹介しています。

脳震盪後の輻輳不全については、2026年のCONCUSS試験が、受傷後4〜24週の11〜25歳を対象にしました。週2回の通院訓練を6週間行った後、両眼の協調の指標で成功または改善した人は88%(52人中46人)で、開始を待っていた人では8%(52人中4人)でした。眼科医療の専門家向けに、脳震盪後の眼球運動(英語)の臨床記事があります。

輻輳不全のプログラムでは、臨床医が設定したブロックストリングスや輻輳カードなどの道具がよく使われます。臨床医は輻輳近点(英語)や融像性輻輳の幅(英語)で経過を確認します。

斜視・斜位による複視の訓練

両眼の協調に関わるその他の原因では、研究の規模はより小さくなります。

  • 間欠性外斜視(目が外側にずれたり戻ったりする状態):AAPOSは「エクササイズの効果が証明されているのは輻輳不全だけです」としています。子ども40人を対象にした2024年の試験では、通院での輻輳開散訓練と抑制解除訓練により、17週時点で経過観察と比べて制御がよくなりました。6〜18歳の子ども177人を対象にした2026年のランダム化試験では、自宅でのVRプログラムにより、12週時点で経過観察と比べて遠見での制御が群間で0.33ポイントよくなり、著者らはこれを控えめな差としています。トレーニングの75%以上を行った子どもは、よりよくなりました。斜視のトレーニングのガイドで紹介しています。
  • 急性後天共同性内斜視(突然目が内側に向く状態):14人を対象にした2026年の後ろ向き研究では、ずれの小さい5人はビジョントレーニングだけで症状が軽くなったと報告されました。残りの9人はプリズムと訓練を併用しました。そのうち2人はプリズムなしで単一視に達し、4人は必要なプリズムの度数が減り、3人は引き続きフルのプリズムが必要で、1人は手術を選びました。
  • 非代償性斜位:この原因だけを対象にしたエクササイズの比較試験は見つかりませんでした。後述のプリズムの研究では、非代償性の斜視の患者の複視がプリズムで消えることが多くありました。

複視のプリズム・フレネル膜プリズム:研究の結果

眼鏡に入れるプリズムは光を曲げて、2つの像を重ねます。AAOは、フレネル膜プリズムを、眼鏡のレンズに貼る一時的なプリズムと説明しています。長期的には理想的ではないものの、まずプリズムを試すことができるとしています。また、プリズムがすべてのタイプに役立つわけではないと指摘しています。

PeerJに掲載された2024年のPortela-Caminoの研究は、プリズムとその後のビジョントレーニングを検証しました。平均年齢約62歳の成人48人を追跡し、多くは第4または第6脳神経の筋力低下がありました。プリズムだけで成功したのは、完了した43人中22人でした。プリズムがうまくいかず、その後プリズムをつけたままクリニックと自宅でビジョントレーニングを行った20人のうち、13人が両眼視を取り戻し、読書と日常生活の機能がよくなったと報告しました。この研究には対照群がなく、著者らは限界として挙げています。著者のうち2人は、使用された2つの輻輳開散プログラムのひとつを作るVisionaryTool社の共同創業者です。

複視に対するプリズムの研究(著者の報告どおり)
研究デザインと規模報告された結果
Tamhankar, J Neuroophthalmol 2011後ろ向き、第4脳神経麻痺の83人92%がプリズムに満足。86%が使い続け、14%が手術
Tamhankar, J Pediatr Ophthalmol Strabismus 2012後ろ向き、さまざまな原因の94人88%で完全または部分的に解消。輻輳不全群では64%
Hatt, Am J Ophthalmol 2014後ろ向き、34人、年齢中央値63歳68%が成功。成功例で読書と日常生活機能のスコアが向上
Tamhankar, J AAPOS 2021前向き症例シリーズ、成人134人58%がとても満足、22%がやや満足。不満の理由は眼鏡の副作用
Anilkumar, Indian J Ophthalmol 2022後ろ向き、31人。71%がフレネル膜プリズム87%で完全に解消
Portela-Camino, PeerJ 2024前後比較、対照なし、成人48人プリズムのみ:43人中22人が成功。プリズムと訓練:プリズム不成功の20人中13人が両眼視を回復

神経麻痺などの原因:治療情報ページの記載

第6脳神経(外転神経)麻痺について、AAOの臨床wikiであるEyeWikiは、経過観察、アイパッチやBangerterフィルター、プリズム(この麻痺ではあまり役立たないことが多いとしています)、ボトックス注射、そして測定値が6か月以上安定してからの手術を挙げています。微小血管性の症例の多くは3〜6か月以内に回復するとし、エクササイズには触れていません。AAOの微小血管性脳神経麻痺のページは、ほとんどの場合、約6〜12週間で自然によくなるとし、アイパッチ、プリズム眼鏡、眼筋手術を挙げています。前述のPortela-Caminoの研究では、麻痺の患者はプリズムだけでうまくいかなかった後にのみ訓練を行いました。

重症筋無力症は薬で治療し、手術を行うこともあるとAAOは説明しています。2026年のレビューは、甲状腺眼症を、目の筋肉が厚くなる自己免疫疾患と説明しています。NHSは、斜視が必ずしも複視を起こすわけではなく、幼い子どもでは代わりに弱視を起こすことがあると指摘しています。視覚抑制のガイドでその仕組みを、両眼視と両眼の協調のガイドで両目がどう協力して働くかを解説しています。

Optics Trainer の位置づけ

Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、ゲーム形式の視覚・脳トレーニングアプリです。両眼の協調のゲームは、前述の輻輳不全のプログラムと同じ種類の輻輳開散課題を使っており、Convergence(輻輳)版と Divergence(開散)版があります。Motor Fusion は、輻輳カードなどの道具を使う融像性輻輳のエクササイズをモデルにしています。2つの像がゆっくり離れていき、2つに分かれたときにタップします。Front or Back と Odd One Out では、輻輳の負荷が上下する中で奥行きを判断します。どのゲームも左右の目に別々の像を見せます。スマートフォン、タブレット、パソコンでは赤青メガネを使い、Meta Quest ではヘッドセットで表示します。アプリの画面は日本語に対応しています。

Optics Trainer は、前述の研究には使われていません。複視の治療や診断ではなく、FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。また、通院での訓練、プリズム、その他の処方されたケアの代わりにもなりません。Motor Fusion は練習であり、臨床的な測定ではありません。臨床での眼球運動の測定については、クリニック向けサイトのOptics Tracker(英語)をご覧ください。新たに起きた複視では、診察を受ける前にアプリを使わず、必ず担当の医療者の計画に沿って使ってください。エクササイズ中に頭痛、目の痛み、複視が出たら、中止して担当の医療者に連絡してください。Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。

2026年10月時点で、モバイル版とウェブ版は、App Store では月額 ¥2,500(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。スマートフォン・タブレットのアプリは7日間の無料体験から始められ、無料のウェブアカウントでは1日3回プレイできます。Meta Quest の VR 版は7日間の無料体験の後、Meta Quest Store で現地通貨の価格が表示されます。

Optics Trainer の両眼の協調のゲームと、このガイドの輻輳不全のエクササイズ
ガイドでの項目Optics Trainer の機能やること
輻輳カードなどを使う融像性輻輳のエクササイズMotor Fusion(Convergence と Divergence)ゆっくり離れていく2つの像が2つに分かれたらタップする
負荷が変わる中での輻輳開散の練習Front or Back(Convergence と Divergence)像がリングの手前にあるか奥にあるかを答える
負荷が変わる中での輻輳開散の練習Odd One Out(Convergence と Divergence)奥行きが飛び出して見える像のペアの方向へスワイプする

Optics Trainer をダウンロード

ダウンロード無料。アプリは7日間の無料トライアル付き。ブラウザでは1日3回まで無料でプレイできます。

よくある質問

目のエクササイズで複視は治る?

原因によります。輻輳不全の試験では、通院でのエクササイズ訓練の成功率が最も高くなりました。神経麻痺と重症筋無力症に関するAAOとEyeWikiのページは、エクササイズではなく、プリズム、アイパッチ、薬、手術を挙げています。単眼性複視は片方の目の光学的な問題から生じます。まず原因の診断を受けてください。

複視を自然に治す方法は?

複視の原因はさまざまなので、ひとつの自然な治し方はありません。AAOは、微小血管性の神経麻痺はほとんどの場合、約6〜12週間で自然によくなるとしています。その他の原因では、眼鏡、プリズム、特定の両眼の協調の問題に対するエクササイズ訓練、薬、手術が必要です。緊急を要する原因もあるので、まず診察を受けてください。

突然の複視は緊急?

緊急として扱ってください。MedlinePlusは、複視は消えたとしても救急医療を受けるよう勧めています。脱力、話しにくさ、まぶたの下垂、激しい頭痛を伴う場合や、頭部外傷の後の場合は、911(日本では119番)に電話してください。眼科クリニック向けのAAOの電話トリアージガイドは、突然の複視を24時間以内に診察すべき緊急のグループに入れ、スタッフに安全側に判断するよう求めています。

単眼性複視と両眼性複視の違いは?

両眼性複視は、両目が一緒に向いていないため、どちらかの目を覆うと消えます。単眼性複視はもう一方の目を覆っても消えず、乱視、ドライアイ、白内障、円錐角膜など、片方の目の光学的な問題から生じます。

複視に役立つエクササイズは?

輻輳不全には、臨床医が設定した輻輳開散のエクササイズが使われ、ブロックストリングスなどの道具を使うこともよくあります。適したエクササイズ、設定、量は診断によって異なります。すべての原因にエクササイズが使われるわけではないので、何が合うかを眼科医療の専門家に相談してください。

脳震盪後の複視にビジョントレーニングは役立つ?

脳震盪後の輻輳不全について、2026年のCONCUSS試験では、通院訓練を6週間行った人の88%が成功または改善し、開始を待っていた人では8%でした。頭部外傷後の複視は、まず救急医療が必要です。

プリズム眼鏡で複視は治る?

プリズムは2つの像を重ねるもので、広く使われています。上の表の公表研究では、研究と原因によって、患者の51%〜92%が成功または満足していました。AAOは、プリズムがすべてのタイプの複視に役立つわけではないと指摘しています。

出典

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  2. CDC. Signs and symptoms of stroke
  3. NHS. Double vision
  4. American Academy of Ophthalmology. Guideline for telephone screening of ophthalmic problems
  5. Gokoffski KK. When is diplopia a sign of something dangerous? American Academy of Ophthalmology. 2022
  6. American Academy of Ophthalmology. Myasthenia gravis
  7. American Academy of Ophthalmology. Microvascular cranial nerve palsy
  8. American Academy of Ophthalmology. What is prism correction in eyeglasses?
  9. AAO EyeWiki. Abducens nerve palsy
  10. AAPOS. Exotropia
  11. Lagrèze WA, et al. The differential diagnosis of diplopia. Dtsch Arztebl Int. 2026
  12. CITT Study Group. Randomized clinical trial of treatments for symptomatic convergence insufficiency in children. Arch Ophthalmol. 2008
  13. Scheiman M, et al. Interventions for convergence insufficiency: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2020
  14. Alvarez TL, et al. CONCUSS randomised clinical trial of vergence/accommodative therapy for concussion-related symptomatic convergence insufficiency. Br J Sports Med. 2026
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  16. Jing Y, et al. Virtual reality-based vision therapy for intermittent exotropia: a randomized clinical trial. JAMA Netw Open. 2026
  17. Satgunam P, et al. Management of acute acquired comitant esotropia using prisms and vision therapy. PLoS One. 2026
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  19. Tamhankar MA, et al. Effectiveness of prisms in the management of diplopia in patients due to diverse etiologies. J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2012
  20. Hatt SR, et al. Successful treatment of diplopia with prism improves health-related quality of life. Am J Ophthalmol. 2014
  21. Tamhankar MA, et al. Benefits and side effects of prisms in the management of diplopia in adults: a prospective study. J AAPOS. 2021
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  23. Portela-Camino JA, et al. Successful treatment of diplopia using prism correction combined with vision therapy/orthoptics improves health-related quality of life. PeerJ. 2024
  24. Optics Trainer. Pricing and platforms (as of October 2026)

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