動体視力とは?テスト・スポーツ研究・トレーニング

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動体視力とは?2つの異なる意味

一般的な視力表で測るのは静止視力で、自分も文字も止まった状態です。動体視力はこれに動きを加えたもので、2つの研究分野でこの言葉の使い方が異なります。

  • 頭の動きによるDVA(前庭):文字は止まったまま、頭が動きます。2016年の研究では、頭を動かしたときと止めたときの視力を比べる検査と説明されており、頭と反対方向に目を動かす反射であるVORが、像をどれだけ安定させているかを反映します。
  • 物の動きによるDVA(スポーツビジョン):頭は止まったまま、視標が動きます。内田らは2012年、DVAを動く物の細部を見る能力と定義し、動くランドルト環(切れ目の方向を答えるC字型の視標)を使って研究しました。
  • KVA(Kinetic Visual Acuity):日本で使われる関連の指標で、ランドルト環が横に動くのではなく、こちらに近づいてきます。2013年のある研究では時速30kmでした。

前庭機能を調べる動体視力テスト

ベッドサイドで行う方法では、頭を止めた状態で視力表を読み、次に検査者が頭を左右または上下に動かしながら読み、読めなくなった行数を記録します。コンピューター版では、頭を動かしながら画面上で視力を測ります。

  • Dynamic illegible E test(1987年):ふらつきの訴えがない110人のうち、頭を動かしたときにEの視力表で1行を超えて成績が落ちた人はいませんでした。著者らは、2行を超える低下は異常とみなせると書いています。
  • コンピューター版DVA(1998年):19〜87歳の健常者42人と前庭機能が低下した55人で、Herdmanらは信頼性0.87と0.83、両群を見分ける感度94.5%、特異度95.2%を報告しました。
  • 低下スコアの信頼性は低いことがある:2016年、市販システムを使った健康な成人46人の研究では、DVA低下スコアの信頼性は低〜中程度(poor-to-fair)で、素点のほうが信頼性が高いという結果でした。
  • 頭の速さが影響する:片側の前庭機能が低下した10人を対象とした2009年の研究では、頭の動きが毎秒0.5回から2回に速くなるほど異常スコアの人が増え、スコアとカロリックテストの相関は弱いものでした。

注視安定化運動と2022年のガイドライン

注視安定化運動(gaze stabilization exercises)は、頭を動かしながら目を視標に向け続ける運動です。米国理学療法士協会(APTA)神経理学療法アカデミーの2022年の診療ガイドラインは、これをVORx1やVORx2などの適応運動と、代償運動に分けています。

このガイドラインは、強いエビデンスに基づき、前庭機能低下のある成人に臨床医が前庭リハビリテーションを提供すべきだとしています。また、強いエビデンスと、害が利益を上回ることに基づき、頭を動かさずに行うサッケードや追従の眼球運動は、注視の安定を促す目的で使うべきではないとしています。4件の研究をレビューした結果、目だけの運動ではDVAの回復は見られませんでした。ガイドラインがまとめた1件の試験では、注視安定化運動を行った13人中12人が年齢相応の正常なDVAに達し、対照群では0人でした。ガイドラインは前庭機能低下のタイプごとに自宅での最低限の実施量を示しており(エビデンスは中程度〜弱い)、担当の臨床医が設定するものとしています。

ほかの測定については、クリニック向け記事の注視安定性とVOR検査(英語)を、前庭リハビリテーションの試験については眼球運動トレーニングのガイドをご覧ください。

スポーツの動体視力とは?研究でわかったこと

研究者たちは、アスリートは動く視標をよりよく見られるのか、そしてそれはなぜかを調べてきました。

アスリートの動体視力(動く視標)に関する主な研究
研究対象課題報告された結果
Ishigaki and Miyao 1993, Percept Mot Skills大学のアスリート53人、非アスリート46人画面を横切るランドルト環を、毎秒300度から切れ目が見えるまで減速大きな切れ目では差なし。最も小さい2つの切れ目では、アスリートのほうが速い速度で見えた
Uchida 2012, PLoS One野球選手と非アスリート動くランドルト環を、目を自由に動かして、または視線を固定して見る目を自由に動かすと選手が優れていた。視線固定では差なし
Uchida 2013, Med Sci Sports Exerc野球選手と非選手眼球運動を記録しながら動くランドルト環を見る選手はより短い遅延で速い眼球運動を示した。網膜上を動く像の知覚には差なし
Hoshina 2013, Clin Ophthalmol日本のプロ野球選手102人静止視力、KVA、横方向のDVA成績レベルによる差はなし。野手は投手よりKVAが高かった

動体視力の鍛え方:トレーニング研究でわかったこと

DVA課題を練習すると、その課題のスコアは変わります。1989年の研究では、男子大学生54人が動く視標で30分の練習を4回行い、DVAが上がりました。最初のスコアが低かった人ほど上がり幅が大きくなりました。頭を自由に動かせる条件の1991年の研究でも同じ傾向が見られました。若年成人58人を対象とした2024年の研究では、動く視標のDVA検査を繰り返すだけで短期的な学習効果が見られ、長期的な学習効果はまれでした。

より幅広いスポーツビジョンプログラムを調べた2件の対照試験では、対照群との差は報告されませんでした。2001年、AbernethyとWoodは40人の若者を、2種類の市販の視覚トレーニングプログラム、読書のプラセボ、身体練習の4群に均等に割り付け、4週間行いました。トレーニング後に変化したスコアもありましたが、群による違いはなく、著者らは検査への慣れを超える視覚や運動成績の向上は見られなかったとしています。Shekar、Ericksonらによる2021年のランダム化二重盲検試験では、大学の野球・ソフトボール選手32人が、DVAと奥行き知覚のデジタルプログラムまたはプラセボプログラムを週3回、3週間行いました。群間に有意差はありませんでしたが、DVAとほかの3つの指標で効果量が0.5以上となり、プラセボ群16人中15人が本物のトレーニングを受けたと考えていました。

Appelbaumらによる2011年の研究では、ストロボスコープ眼鏡をかけて投げる・捕る練習をした人は、中心部の動き感度と短時間の注意課題で対照群より大きく向上しましたが、周辺の課題や多重物体追跡では差がありませんでした。AppelbaumとEricksonによるデジタルスポーツビジョントレーニングのレビューは、知覚学習やバーチャルリアリティのプログラムを紹介しています。またEricksonの2021年のレビューは、スポーツでどの視覚要素が重要か、それをどう評価するのが最善かは「多くの議論の的」だと述べています。

動体視力の視力表とオンラインの動体視力テスト

DVAの視力表に決まったものはありません。スポーツの研究では動くランドルト環を使い、速さや大きさを変えて、切れ目の方向を答えられる点を求めます。

オンラインやアプリの動体視力テストについて、検証された基準値は見つかりませんでした。また2024年の研究は、繰り返すだけでスコアが上がることを示しています。自宅でのスコアで前庭の問題を否定することはできません。めまい、歩くと視界が揺れる、急なふらつきがある場合は医師の診察を受けてください。頭のけがの後に急に症状が出た場合は、すぐに受診が必要です。

Fast Pitch:動く視標のDVAをモデルにしたゲーム

Fast Pitch は、スポーツビジョンにおける物の動きのDVA、とくに近づいてくる視標のタイプをモデルにした Optics Trainer のゲームです。回転するボールがリリースポイントからこちらへ迫り、近づくにつれて大きくなります。切れ目が1つある輪が横向きに転がって現れ、飛行の終わり近くで一瞬こちらを向き、また転がって去ると、ボールが消えます。切れ目が向いていた方向をタップします。

動く視標の切れ目の方向を答えるという、ランドルト環のDVA課題の中心部分はそのままです。変わっている点は次のとおりです。

  • 視標は一定の速さで横に動くのではなく、近づきながら回転します。
  • レベルが上がると、飛行時間が短くなり、輪が小さくなり、回転が速くなり、切れ目の向きの種類が増え、カーブしたり終盤で変化したりする球も出てきます。
  • 1セッションは短い時間制のラウンドで、視力値を記録するのではなくポイントで採点します。スコアはあくまで練習の結果であり、臨床的な測定ではありません。
  • オプションの両眼モードがあり、スマートフォン、タブレット、パソコンでは赤青メガネを使い、Meta Quest では内蔵されています。

Optics Trainer の位置づけ

Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、視覚と脳のトレーニングゲームのセットです。アプリの画面は日本語に対応しています。Fast Pitch は、スポーツビジョン研究で使われる動く視標のDVA課題をモデルにしており、近づいてくるボールの切れ目を読み取る課題です。多重物体追跡のガイドで紹介している UFO Bounce や、周辺視野トレーニングのガイドで紹介しているゲームも、スポーツや追従のゲームです。

Fast Pitch は前庭のDVA検査をモデルにしたものではありません。頭を動かす必要がないため、VORや注視の安定性は調べられず、注視安定化運動でもなく、前庭リハビリテーションの一部でもありません。ここで紹介した研究で検証されたものでもありません。検査や測定ではなく、治療や診断でもなく、FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。視力、眼球運動、競技成績が変わるとは主張していません。固視と注視の安定性の臨床的な測定については、クリニック向けサイトのOptics Tracker(英語)をご覧ください。

Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。スマートフォンとタブレットのアプリは7日間の無料トライアルから始まり、無料のウェブアカウントでは1日3回までプレイできます。その後のモバイル版とウェブ版の料金は、App Store では月額 ¥2,500(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。VR版は7日間の無料トライアルの後、Meta Quest Store で現地通貨の価格が表示されます。

Optics Trainer をダウンロード

ダウンロード無料。アプリは7日間の無料トライアル付き。ブラウザでは1日3回まで無料でプレイできます。

よくある質問

動体視力とは?

動きがあるときに細部をどれだけはっきり見られるかのことです。前庭の診療では、頭を動かしながら文字を読む力を指します。スポーツビジョンでは、動くランドルト環の切れ目のように、動く物の細部を見る力を指します。

動体視力テストで何がわかる?

頭を動かすテストでは、頭を止めたときと動かしたときの視力を比べます。これは前庭眼反射がどれだけ目を安定させているかを反映します。1998年の研究では、コンピューター版のテストが、健康な人と前庭機能が低下した人を感度94.5%、特異度95.2%で見分けました。

動体視力テストの正常な結果は?

テストによって異なります。1987年のある研究では、頭を動かしたときに視力表で1行を超えて成績が落ちた健康な人はおらず、著者らは2行を超える低下を異常としました。コンピューターのシステムはそれぞれ独自の基準値を使います。

動体視力は鍛えられる?

1989年と1991年の研究では、動く視標の課題を練習するとその課題のスコアが上がりました。より幅広いスポーツビジョンプログラムを調べた2001年と2021年の対照試験では、プラセボ群や対照群との差は見られませんでした。

注視安定化運動とは?

頭を動かしながら目を視標に向け続ける、前庭リハビリテーションの運動です。APTAの2022年のガイドラインは前庭機能低下に対してこれを推奨し、頭を動かさない眼球運動は注視の安定のために使うべきではないとしています。

野球選手の動体視力が高いのはなぜ?

内田らの2件の研究では、目を動かさないようにすると選手の優位性はなくなり、選手はより短い遅延で速い眼球運動を行っていました。著者らはこれを、目で視標を追う能力と結びつけました。

動体視力のゲームはある?

Optics Trainer の Fast Pitch は動く視標のDVAをモデルにしたゲームで、こちらへ飛んでくる回転するボールの切れ目の方向をタップします。VORや注視の安定性は調べられず、これらの研究で検証されたものでもなく、検査でも治療でもありません。

出典

  1. Herdman SJ, et al. Computerized dynamic visual acuity test in the assessment of vestibular deficits. Am J Otol. 1998
  2. Longridge NS, Mallinson AI. The dynamic illegible E-test: a technique for assessing the vestibulo-ocular reflex. Acta Otolaryngol. 1987
  3. Dannenbaum E, et al. Clinical evaluation of dynamic visual acuity in subjects with unilateral vestibular hypofunction. Otol Neurotol. 2009
  4. Riska KM, Hall CD. Reliability and normative data for the dynamic visual acuity test for vestibular screening. Otol Neurotol. 2016
  5. Hall CD, et al. Vestibular rehabilitation for peripheral vestibular hypofunction: an updated clinical practice guideline from the Academy of Neurologic Physical Therapy of the APTA. J Neurol Phys Ther. 2022
  6. Ishigaki H, Miyao M. Differences in dynamic visual acuity between athletes and nonathletes. Percept Mot Skills. 1993
  7. Uchida Y, et al. Origins of superior dynamic visual acuity in baseball players: superior eye movements or superior image processing. PLoS One. 2012
  8. Uchida Y, et al. Dynamic visual acuity in baseball players is due to superior tracking abilities. Med Sci Sports Exerc. 2013
  9. Hoshina K, et al. A study of static, kinetic, and dynamic visual acuity in 102 Japanese professional baseball players. Clin Ophthalmol. 2013
  10. Long GM, Rourke DA. Training effects on the resolution of moving targets: dynamic visual acuity. Hum Factors. 1989
  11. Long GM, Riggs CA. Training effects on dynamic visual acuity with free-head viewing. Perception. 1991
  12. Wang X, et al. The short- and long-term perceptual learning of clinical dynamic visual acuity test. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2024
  13. Abernethy B, Wood JM. Do generalized visual training programmes for sport really work? An experimental investigation. J Sports Sci. 2001
  14. Shekar SU, et al. Efficacy of a digital sports vision training program for improving visual abilities in collegiate baseball and softball athletes. Optom Vis Sci. 2021
  15. Erickson GB. Topical review: visual performance assessments for sport. Optom Vis Sci. 2021
  16. Appelbaum LG, Erickson GB. Sports vision training: a review of the state-of-the-art in digital training techniques. Int Rev Sport Exerc Psychol. 2018
  17. Appelbaum LG, et al. Improved visual cognition through stroboscopic training. Front Psychol. 2011

関連ガイド

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