脳トレゲームに科学的根拠は?元になった認知課題
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公開された研究をもとに Optics Trainer チームが執筆しました。出典はすべて下記にリンクしています。
多くの脳トレゲームは、心理学者が何十年も研究室で使ってきた課題をもとに作られています。たとえば、色と単語のストループ課題やフランカー課題です。その歴史は本物ですが、多くの人が知りたい問いとは別の問いに答えるものです。つまり「ゲームをすることで、ゲームの外の何かが変わるのか」という問いです。このガイドでは、脳トレゲームの科学的根拠について、研究室の課題からどのようにゲームが作られるのか、Optics Trainer のゲームの元になった研究用の認知課題はどれか、近転移と遠転移とは何か、そして脳トレ研究の読み方を解説します。
脳トレゲームに科学的根拠はあるの?
この問いには2つの部分があります。そのゲームは科学者が使う課題に基づいているか。多くのゲームでは、答えは「はい」です。では、その課題を練習すると、ほかの能力や日常生活が変わるのか。これを調べるのがトレーニング研究です。
Daniel Simons 氏らによる2016年のレビューは、脳トレ企業自身が引用した研究を調べました。著者らは、訓練した課題の成績が上がるという証拠は豊富にある一方、よく似た課題についての証拠は少なく、かけ離れた課題や日常的な思考についての証拠はほとんどないと報告しました。Giovanni Sala 氏と Fernand Gobet 氏による2019年の論文は、複数のメタ解析をまとめ、一般的な認知能力への効果はごくわずかだったと報告しました。研究間の違いは、研究デザインの質と統計的なアーチファクトで説明できると両氏は述べています。
Simons 氏のレビューと ACTIVE 試験については、視覚の脳トレのガイドで詳しく扱っています。脳トレアプリの比較では、米国連邦取引委員会(FTC)が2016年に Lumosity の運営会社に出した命令を取り上げています。この命令は、実生活での効果を主張する前に、適切で信頼できる科学的根拠を求めるものです。
脳トレゲームは研究室の課題からどう作られる?
研究で使われる認知課題は、1つの心のはたらきをできるだけ純粋に測るように作られています。典型的な研究室の課題では、単純な刺激を示し、反応の速さと正確さを記録し、1点だけが違う試行どうしを比べます。
ゲームは課題の核となる部分を残し、外側を変えます。スコア、タイマー、連続記録、イラスト、難しいレベルなどです。そのおかげで課題を繰り返すのが楽しくなりますが、ゲームはもはや研究された形そのものではなく、ゲームのスコアには基準値(ノルム)がありません。
たとえば Lumosity のブログは2018年に、自社のゲームの一部は、同社が1935年のものとしたストループテストと、1974年のフランカー課題を応用したものだと述べています。
研究で使われる認知課題と、それをもとにしたゲーム
下の表は、Optics Trainer のゲームとドリルの元になった研究室の課題をまとめたものです。どのゲームやドリルも課題をもとに作られていますが、その課題の研究で使われたものはありません。
- ストループ:ストループテストのガイドで、1935年の実験と練習の研究でわかったことを扱っています。
- フランカー:フランカー課題のガイドで、選択的注意と NIH Toolbox 版を扱っています。
- Go/No-Go:Go/No-Go課題のガイドで、反応抑制の研究を扱っています。
- ワーキングメモリ:ワーキングメモリのゲームのガイドで、スパン課題とトレーニングのメタ解析を扱っています。
- 有効視野と多重物体追跡:周辺視野のトレーニングのガイドで、スポーツビジョンと物体追跡の研究を扱っています。
- サッケードと滑動性追従眼球運動:眼球運動トレーニングのガイドで眼球運動の練習を、クリニック向けの記事サッケード・滑動性追従眼球運動・固視(英語)で臨床での検査方法を扱っています。
- 輻輳開散運動と融像:両眼視と両眼の協調のガイドで両眼の協調の問題を、クリニック向けの記事融像性輻輳の範囲(英語)でその測定方法を扱っています。
| 研究室の課題 | 主な初期の文献 | やること | Optics Trainer でこの課題をもとにしたもの |
|---|---|---|---|
| 色と単語のストループ課題 | Stroop, 1935 | 単語が別の色の名前を表しているとき、その単語のインクの色に反応する | 色と単語のゲーム |
| フランカー課題 | Eriksen と Eriksen, 1974 | 両側の刺激を無視して、中央の刺激に反応する | Directionality |
| Go/No-Go課題 | Donders, 1868 | ある合図には反応し、別の合図には反応を控える | Flower Tap |
| ワーキングメモリスパン | 多くのバージョンがある | 項目や順序を覚えておき、あとで答える | Symbol Order、Number Flash、Working Memory、Memory Grid |
| 有効視野(UFOV) | Ball ら, 1988 | 中央の項目を見分けながら、離れた場所に一瞬出る標的の位置を捉える | Middle Match、Peripheral Awareness ドリル(関連する課題) |
| 多重物体追跡(MOT) | Pylyshyn と Storm, 1988 | 見た目が同じものの中から、動く複数の標的を目で追う | UFO Bounce、Target Rotator、Multiple-Object Tracking ドリル |
| 輻輳開散運動と融像 | 臨床での輻輳開散の測定 | 要求が変わる中で、両眼で見た像を1つに保つ | 輻輳と開散のレベルがある両眼の協調のゲーム |
| サッケードと滑動性追従眼球運動 | 臨床での眼球運動検査 | 標的から標的へ視線を跳ばす、または動く標的を目で追う | Saccades と Pursuits のドリル |
近転移と遠転移の違いとは
近転移とは、訓練した課題やそれに近い課題の成績が上がることです。遠転移とは、推論、学校の成績、仕事、日常生活など、別の能力が伸びることです。
多くの研究をまとめたメタ解析では、遠転移よりも近転移の効果のほうが多く報告されています。
- Kassai らの2019年の研究は、子どもの実行機能(ワーキングメモリ、抑制コントロール、柔軟性)のトレーニング実験をまとめました。トレーニングによる近転移の効果は、43の比較で g = 0.44 でした。訓練していない実行機能への効果は、17の比較で g = 0.11 で、統計的に有意ではありませんでした。著者らは、遠転移の説得力のある証拠は見つからなかったと述べています。
- Melby-Lervåg、Redick、Hulme の2016年の研究は、87の論文をまとめました。トレーニング直後のワーキングメモリの測定値の伸びは信頼できるものでした。アクティブ対照群と比べると、推論、読み、計算の伸びについて説得力のある証拠はありませんでした。
- Sala 氏と Gobet 氏の2019年の論文は、いくつもの分野のトレーニングで、一般的な認知能力への効果はごくわずかだったと報告しました。
脳トレの研究を読むときのポイント
以下の問いの多くは、Simons 氏のレビューと Walter Boot 氏らによる2013年の論文から取ったものです。研究論文や企業の研究紹介ページを読むときに役立ちます。
- 練習効果:同じテストを繰り返すと、誰でも速くなります。同じテストを受けた対照群がなければ、成績の伸びは再テストの影響だけかもしれません。
- アクティブ対照群とパッシブ対照群:パッシブ群はテストを受けるだけで、アクティブ群は同じ時間だけ別の活動をします。成人122人を対象とした2014年のランダム化二重盲検研究では、抑制のトレーニングはパッシブ群と比べると効果があるように見えましたが、アクティブ対照群とは差がありませんでした。Boot 氏らは、伸びをトレーニングの成果とみなすには、アクティブ対照群であっても「伸びるはずだ」という期待が同じである必要があると主張しました。
- 出版バイアス:よい結果が出た研究ほど出版されやすくなります。2016年のワーキングメモリのメタ解析はこれを検証し、何らかの介入を受けた対照群を使った研究には、証拠としての価値が見られなかったと報告しました。
- 企業が資金を出した研究:資金提供と利益相反の記載を確認しましょう。Simons 氏らは、企業が引用した研究をもとにレビューを組み立てました。視覚の脳トレのガイドでは、ACTIVE 試験の著者の1人とトレーニングソフトの所有者との金銭的な関係に触れています。
- 誰を対象にした研究か:高齢者、子ども、アスリートでの結果が、ほかの人にも当てはまるとは限りません。
Optics Trainer の位置づけ
Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、ゲーム形式の視覚と脳のトレーニングアプリです。アプリの画面は日本語に対応しています。ゲームとドリルは上の研究室の課題をもとに作られています。色と単語のゲームはストループ課題、Directionality はフランカー課題、Flower Tap は Go/No-Go課題、Symbol Order、Number Flash、Working Memory、Memory Grid はワーキングメモリスパン課題がもとです。Middle Match は有効視野の課題に似ており、UFO Bounce と Target Rotator は多重物体追跡がもとになっています。
両眼の協調のゲーム Odd One Out、Front or Back、Motor Fusion は、表の輻輳開散運動と融像の行と同じ種類の課題を使っています。Drills タブには、サッケード、滑動性追従、周辺の気づき、物体追跡のドリルがあります。
Optics Trainer のゲームは、ここで紹介したどの研究でも検証されていません。もとになった課題を練習し、挑戦するためのものです。検査や測定ではなく、治療や診断でもありません。また、FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。Motor Fusion は練習であり、輻輳開散の範囲を臨床的に測定するものではありません。測定のための製品は、クリニック向けサイトで紹介している Optics Tracker です。Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。
スマートフォンとタブレットのアプリは7日間の無料トライアルから始まり、無料のウェブアカウントでは1日3回までプレイできます。その後のモバイルとウェブの利用は、App Store では月額 ¥2,500(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。VR の利用は7日間の無料トライアルのあと、Meta Quest Store で現地通貨の価格が表示されます。
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ダウンロード無料。アプリは7日間の無料トライアル付き。ブラウザでは1日3回まで無料でプレイできます。
よくある質問
脳トレゲームに科学的根拠はありますか?
多くは、長い研究の歴史がある課題に基づいています。ゲームをすることでほかの能力が変わるかどうかは、別の問題です。2016年のレビューでは、訓練した課題の伸びには豊富な証拠があり、日常的な思考についての証拠はほとんどありませんでした。
脳トレゲームの科学的な仕組みとは?
ほとんどの脳トレゲームは、ストループ課題、フランカー課題、Go/No-Go課題など、研究で使われる認知課題を応用したものです。開発者がスコア、タイマー、レベルを加えます。そして、練習の効果が訓練していない課題にも及ぶかを、トレーニング研究が調べます。
近転移と遠転移の違いは何ですか?
近転移は、訓練した課題やそれに近い課題の成績が上がることです。遠転移は、推論、学校、日常生活など、別の能力が伸びることです。メタ解析では、遠転移よりも近転移のほうが多く報告されています。
研究ではどんな認知課題が使われていますか?
よく使われるのは、色と単語のストループ課題、フランカー課題、Go/No-Go課題、ワーキングメモリスパン課題、視覚探索、多重物体追跡、有効視野(UFOV)検査などです。どれも1つの心のはたらきを取り出すように作られています。
脳トレの研究で対照群が大切なのはなぜですか?
人は繰り返したテストで速くなり、伸びると期待するとより頑張ることがあります。2014年の研究では、抑制のトレーニングはパッシブ対照群を上回りましたが、アクティブ対照群は上回りませんでした。
Optics Trainer のゲームは注意力や記憶力の検査ですか?
いいえ。研究室の課題をもとに作られていますが、研究で検証されたものではなく、臨床的な測定も行いません。測定については臨床の専門家にご相談ください。クリニック向けサイトの Optics Tracker が、私たちの測定のための製品です。
出典
- Simons DJ, et al. Do "brain-training" programs work? Psychol Sci Public Interest. 2016
- Sala G, Gobet F. Cognitive training does not enhance general cognition. Trends Cogn Sci. 2019
- Kassai R, et al. A meta-analysis of the experimental evidence on the near- and far-transfer effects among children's executive function skills. Psychol Bull. 2019
- Melby-Lervåg M, Redick TS, Hulme C. Working memory training does not improve performance on measures of intelligence or other measures of "far transfer". Perspect Psychol Sci. 2016
- Boot WR, et al. The pervasive problem with placebos in psychology. Perspect Psychol Sci. 2013
- Enge S, et al. No evidence for true training and transfer effects after inhibitory control training in young healthy adults. J Exp Psychol Learn Mem Cogn. 2014
- Stroop JR. Studies of interference in serial verbal reactions. J Exp Psychol. 1935
- Eriksen BA, Eriksen CW. Effects of noise letters upon the identification of a target letter in a nonsearch task. Percept Psychophys. 1974
- Donders FC. On the speed of mental processes (translation of the 1868 paper). Acta Psychol. 1969
- Ball KK, et al. Age and visual search: expanding the useful field of view. J Opt Soc Am A. 1988
- Pylyshyn ZW, Storm RW. Tracking multiple independent targets: evidence for a parallel tracking mechanism. Spat Vis. 1988
- Lumosity. From lab to laptop: the origins of Lumosity games. 2018
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