輻輳・開散トレーニング:融像性輻輳とプリズム・ジャンプ訓練
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公開された研究をもとに Optics Trainer チームが執筆しました。出典はすべて下記にリンクしています。
輻輳・開散トレーニングは、像を1つに保ったまま、両眼を内側に寄せる動き(輻輳)と外側に戻す動き(開散)を練習するものです。主に輻輳不全に用いられ、間欠性外斜視や健康な成人でも研究されています。このガイドでは、輻輳開散運動と融像性輻輳とは何か、融像性輻輳訓練の主な種類(プリズム、ジャンプ、ベクトグラム、コンピューター)、輻輳不全以外で研究からわかったこと、そして Optics Trainer の両眼の協調ゲームがこうした課題をどのようにモデルにしているかを説明します。
輻輳開散運動とは?輻輳・開散と融像性輻輳
輻輳開散運動とは、両眼が互いに逆方向へ動く眼球運動です。近くのものを見るとき、両眼は内側に寄ります。これが輻輳です。遠くを見直すと、両眼は外側に戻ります。これが開散です。輻輳開散運動がピント合わせや眼球運動とどう関わるかは、両眼視機能と両眼の協調のガイドで説明しています。
融像性輻輳は、両眼を同じ目標に合わせ続けるしくみです。米国眼科学会(AAO)の臨床向けウィキである EyeWiki は、左右の眼に映る像のわずかなずれをフィードバックとして使い、両眼の位置を保つものだと説明しています。目標が2つに見えるまでに、さらにどれだけ内寄せ・外開きができるかを、融像性輻輳の幅(融像幅、融像余力)と呼びます。輻輳側を正の融像性輻輳、開散側を負の融像性輻輳といいます。
急に物が二重に見える、目の痛み、視力の低下、頭部のけがの後の症状がある場合は、トレーニングではなく、すぐに医師の診察を受けてください。トレーニング中に頭痛、目の痛み、複視が出たら中止し、担当の専門家に連絡してください。
融像性輻輳の測り方
融像性輻輳の幅は通常、目標を見ながら度数が段階的に強くなるプリズム(多くはプリズムバー)を使い、ぼやけたとき、2つに分かれたとき、再び1つに戻ったときを申告して測ります。輻輳不全治療試験(CITT)では、正の融像性輻輳が低いこと、つまりシェアードの基準を満たさないか、プリズムバーで15プリズムジオプトリー以下でぼやけ・分離が起こることが参加条件の1つでした。眼科医療の専門家向けには、クリニックサイトの融像幅に関する記事(英語)があります。
輻輳開散の柔軟性(vergence facility)は、速さを調べる関連検査です。1998年の研究では、フリッププリズムを基底内方と基底外方に交互に切り替えたとき、1分間に何回像を1つに戻せるかと定義されました。成人40人では、近見での3Δ基底内方/12Δ基底外方のフリッパーが、症状のある人とない人を最もよく区別しました。
融像性輻輳訓練:プリズム、ジャンプ、ベクトグラム、コンピューター
輻輳・開散トレーニングでは検査と同じ道具を使い、負荷を少しずつ上げながら繰り返します。よく使われる種類は次のとおりです。
- プリズム訓練:基底外方プリズムをのぞくと、目標を1つに保つために輻輳が必要になり、基底内方プリズムでは開散が必要になります。EyeWiki は基底外方プリズムの訓練をこのように説明しています。プリズムバーを使うと負荷を段階的に上げられます。
- ジャンプ輻輳訓練:フリッププリズムを使ったり、近くと遠くの目標を交互に見たりして、2つの負荷を素早く切り替えます。EyeWiki は自宅でできる輻輳訓練の1つとしてジャンプ輻輳を挙げており、1998年の柔軟性の研究でも、同じように交互に切り替えるフリッププリズムが検査として使われました。
- ベクトグラム、トラナグリフ、アパーチャールール、エキセントリックサークル:偏光、赤緑、または印刷された目標で左右の眼に別々の絵を見せ、像を1つに保ったまま負荷を変えられます。成人を対象とした CINAPS 試験では、ベクトグラム、アパーチャールール、エキセントリックサークル、コンピューター視能訓練が手法として挙げられていました。
- コンピューター視能訓練:ランダムドットステレオグラムや2枚の絵からなる目標を表示し、うまくできると負荷を上げるソフトウェアです。EyeWiki は、こうしたプログラムでは両眼が目標に向いている必要があると述べています。
- ペンシルプッシュアップやブロックストリングなど、自宅でできる輻輳・開散の訓練:輻輳不全のトレーニングとブロックストリングのガイドで扱っているため、ここでは繰り返しません。
輻輳不全に対する輻輳トレーニング:まとめ
輻輳・開散トレーニングの試験の多くは輻輳不全を対象としています。輻輳不全治療試験とその読書に関する追跡研究を含む子どもの試験は、輻輳不全のトレーニングのガイドで扱っています。
若年成人を対象にしたランダム化試験が2つあります。19〜30歳の成人46人を対象とした2005年の試験では、輻輳近点が近づいた(12.8 cmから5.3 cm)のも、正の融像性輻輳が上がった(11.3から29.7プリズムジオプトリー)のも、診療所での訓練の群だけでした。症状は3群すべてで改善し、症状の基準を満たさなくなった人は、診療所群で42%、プラセボ群で31%、ペンシルプッシュアップ群で20%でした。
2020年の CINAPS 試験では、18〜32歳の成人50人が、本物またはプラセボの訓練を診療所で1時間ずつ12回受けました。輻輳近点は訓練群で6.0 cm、プラセボ群で3.1 cm改善し、正の融像性輻輳は17.3プリズムジオプトリー対7.4プリズムジオプトリー上がりました。症状スコアは両群で同程度に改善し、著者らは今後の試験に向けて症状質問票の見直しを勧めました。
輻輳不全以外での輻輳トレーニング
輻輳・融像訓練は、片眼がときどき外側にずれる間欠性外斜視にも用いられます。遠見でずれが大きくなる開散過多型も含まれます。2021年のコクランレビューは、間欠性外斜視について890人が参加した6つのランダム化試験を見つけました。比較されていたのは、手術の種類、アイパッチと経過観察、手術前のプリズム順応で、輻輳・開散トレーニングを検証した試験はありませんでした。Ma と Scheiman による2024年のレビューは、間欠性外斜視の管理について合意はないとし、手術以外の選択肢としてビジョントレーニングと視能訓練を挙げています。
その後の試験を含むほかの研究を下の表にまとめました。近見で両眼が内側に寄りすぎる輻輳過多については、Ehrt による2016年のレビューが二重焦点眼鏡または手術を挙げており、輻輳・開散トレーニングの対照試験は見つかりませんでした。
| 研究 | デザイン | 対象 | トレーニング | 報告された結果 |
|---|---|---|---|---|
| Daum 1984 | 後ろ向き症例集積 | 開散過多の18人(平均年齢15.8歳) | 視能訓練、平均5.2週間 | 正の輻輳と、わずかに遠見の斜視角が変化。負の輻輳、輻輳近点、立体視は変化なし |
| Ma 2024・2025 | ランダム化、検者マスク、単施設 | 間欠性外斜視の6〜17歳の子ども40人 | 診療所での輻輳・抑制解除訓練 対 経過観察 | 17週時点で遠見の制御スコアが良好(1点以上の改善が75%対25%)。融像幅と輻輳開散の柔軟性も大きかった。著者らは本格的な試験が必要とした |
| Hedayati 2025 | ランダム化、3群 | 間欠性外斜視の5〜18歳の子どもと10代53人 | 診療所と自宅での視能訓練(ビデオゲームあり・なし)対 部分的なアイパッチ | 融像性輻輳、立体視、輻輳近点、遠見の制御は訓練群でより改善 |
| Jing 2026 | ランダム化、3病院 | 間欠性外斜視の6〜18歳の子ども177人 | 自宅でのVRビジョントレーニング12週間 対 経過観察 | 制御スコアの差は0.33点。著者らは控えめな差とし、多くトレーニングした人ほど変化が大きかった |
健康な成人における輻輳の順応と学習
研究者は、両眼視が正常な人でも練習で輻輳開散運動が変わるかを調べてきました。短期的な輻輳順応やプリズム順応は少なくとも1970年代から研究されており、たとえば Schor による1979年の論文があり、最近では Alvarez と Scheiman が率いる研究グループが研究しています。
- Talasan ら(2016年):両眼視が正常な成人12人がステップ刺激とランプ刺激による輻輳開散の反復練習を12時間行い、11人は行いませんでした。練習後、輻輳開散運動は早く始まり、早く落ち着き、より正確になり、その変化は練習しなかった群より大きいものでした。輻輳近点と斜位は変わりませんでした。
- Horwood ら(2014年):症状のない若年成人156人が、2週間の異なる目のトレーニング、プラセボ、何もしない群にランダムに割り付けられました。輻輳訓練で近見の輻輳反応が増えました。何もしない群に「もっと頑張って」と促すだけでも反応が増え、著者らは本当の訓練効果は小さいと書いています。
- Alvarez ら(2017年):20〜70歳の健康な成人49人では、輻輳開散の速さを順応させる能力は年齢に左右されませんでしたが、斜位の順応の量は年齢とともに減りました。
Optics Trainer の位置づけ
Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、ゲーム形式の視覚・脳トレーニングアプリです。アプリの画面は日本語に対応しています。両眼の協調ゲームは、スマートフォン、タブレット、パソコンでは赤青メガネを使い、Meta Quest では左右の眼への映像の分離が組み込まれています。次の各ゲームには、基底外方または基底内方の負荷を上げる Convergence(輻輳)版と Divergence(開散)版もあります。
これらのゲームは、診療所での輻輳・開散課題の核となる部分を保っています。左右の眼に1枚ずつの2枚の絵を見せ、像を1つに保つ間に負荷が変わるという点です。変えているのは環境で、プリズムや偏光スライドの代わりに画面を使い、口頭で答える代わりにスワイプやタップで答え、1ラウンドは60秒で、段階を調整する専門家はいません。ここで紹介したどの研究でも検証されていません。Odd One Out と Front or Back の Convergence 版と Divergence 版はアプリ内に結果を表示しますが、これは練習の結果であり、融像幅の臨床的な測定ではありません。Optics Trainer は治療や診断を目的としたものではなく、FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。測定のための製品は、クリニックサイト(英語)で紹介している Optics Tracker です。Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。
スマートフォン・タブレット版アプリは7日間の無料体験から始まり、無料のウェブアカウントでは1日3回までプレイできます。その後、モバイル版とウェブ版は App Store では月額 ¥2,500(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。VR 版にも7日間の無料体験があり、その後の価格は Meta Quest Store でお住まいの地域の通貨で表示されます。
- Odd One Out:4枚の絵が表示され、そのうち1枚だけがほかと違う奥行きにあります。その絵の方向へスワイプします。3回続けて正解すると負荷が上がり、2回続けて間違えると下がります。輻輳開散の負荷が上下する中で行う奥行きの判断をモデルにしています。
- Front or Back:絵がリングの手前にあるか奥にあるかをスワイプで答えます。負荷の上下のしかたは同じです。同じ種類の奥行きの判断をモデルにしています。
- Motor Fusion:1組の絵がゆっくり離れていき、2つに分かれたらタップします。すると新しい絵が始まります。プリズムバーやベクトグラムによる融像幅の練習をモデルにしていますが、あくまで練習です。正解・不正解の採点はありません。
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よくある質問
輻輳・開散トレーニングとは?
像を1つに保ったまま、両眼を内側に寄せる(輻輳)、または外側に開く(開散)動きを練習するものです。専門家はプリズム、ベクトグラム、コンピュータープログラム、ブロックストリングなどの道具を使い、負荷を少しずつ上げます。
融像性輻輳とは?
左右の眼の像のわずかな違いを使って、両眼を同じ目標に向け続ける眼球運動です。融像性輻輳の幅とは、目標が2つに見えるまでに両眼をどこまで内側または外側に動かせるかを指します。
ジャンプ輻輳訓練とは?
フリッププリズムを使ったり、近くと遠くの目標を交互に見たりして、2つの輻輳開散の負荷を素早く切り替える訓練です。関連する臨床検査である輻輳開散の柔軟性では、1分間に何回切り替えられるかを数えます。
プリズム訓練とは?
目標を1つに保つために、両眼を内側(基底外方)または外側(基底内方)に動かす必要があるプリズムをのぞく訓練です。専門家は、プリズムバーやフリッププリズムを使って、プリズムの強さを段階的に上げます。
輻輳・開散トレーニングは間欠性外斜視に役立ちますか?
2021年のコクランレビューには、トレーニングの試験は含まれていませんでした。その後、2024年の子ども40人の試験と、自宅でのVRによる訓練を調べた2026年の子ども177人の試験で、経過観察より良い制御スコアが報告されました。大きい方の試験の著者らは、その変化を控えめなものとしています。
大人でも輻輳開散運動は変わりますか?
輻輳不全のある成人の試験では、診療所での訓練でプラセボより輻輳近点と融像性輻輳が改善しましたが、症状は両群で改善しました。健康な成人の研究では、練習後に輻輳開散運動が速く正確になりました。
輻輳・開散トレーニングのゲームやアプリはありますか?
あります。診療所ではコンピューター視能訓練のプログラムが使われ、Optics Trainer には輻輳・開散のレベルがある両眼の協調ゲームがあります。Optics Trainer はこれらの研究で検証されておらず、輻輳開散の臨床的な測定は行いません。
出典
- AAO EyeWiki. Convergence insufficiency
- Gall R, Wick B, Bedell H. Vergence facility: establishing clinical utility. Optom Vis Sci. 1998
- CITT Investigator Group. A randomized clinical trial of treatments for symptomatic convergence insufficiency in children. Arch Ophthalmol. 2008
- Scheiman M, et al. A randomized clinical trial of vision therapy/orthoptics versus pencil pushups for the treatment of convergence insufficiency in young adults. Optom Vis Sci. 2005
- Alvarez TL, et al. Convergence Insufficiency Neuro-mechanism in Adult Population Study randomized clinical trial: clinical outcome results. Optom Vis Sci. 2020
- Nehad T, Salem T, Elmohamady MN. Combined office-based vergence therapy and Home Therapy System for convergence insufficiency in Egyptian children. Open Ophthalmol J. 2018
- Pang Y, et al. Interventions for intermittent exotropia. Cochrane Database Syst Rev. 2021
- Ma MM, Scheiman M. Divergence excess and basic exotropia types of intermittent exotropia: a major review. Part 2. Strabismus. 2024
- Ma MM, et al. Office-based vergence and anti-suppression therapy for the treatment of small-to-moderate angle intermittent exotropia: a randomised clinical trial. Ophthalmic Physiol Opt. 2024
- Ma MM, et al. Effect of office-based vergence and anti-suppression therapy on binocular vision and accommodation in intermittent exotropia: a randomised clinical trial. Ophthalmic Physiol Opt. 2025
- Hedayati M, et al. Combined office-based and home-based orthoptic training in the management of intermittent exotropia in children: a randomized clinical trial. Strabismus. 2025
- Jing Y, et al. Virtual reality-based vision therapy for intermittent exotropia: a randomized clinical trial. JAMA Netw Open. 2026
- Daum KM. Divergence excess: characteristics and results of treatment with orthoptics. Ophthalmic Physiol Opt. 1984
- Ehrt O. Conservative and surgical treatment of convergence excess. Ophthalmologe. 2016
- Schor CM. The influence of rapid prism adaptation upon fixation disparity. Vision Res. 1979
- Talasan H, et al. Disparity vergence responses before versus after repetitive vergence therapy in binocularly normal controls. J Vis. 2016
- Horwood AM, Toor SS, Riddell PM. Change in convergence and accommodation after two weeks of eye exercises in typical young adults. J AAPOS. 2014
- Alvarez TL, et al. The influence of age on adaptation of disparity vergence and phoria. Vision Res. 2017
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