眼球運動トレーニング:サッケード・追従・固視

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眼球運動の種類:サッケード、追従、固視、輻輳開散、VOR

臨床レビューでは、眼球運動にはいくつかの系統があると説明されています。

  • サッケード(衝動性眼球運動):新しい目標を中心窩(網膜で最もはっきり見える部分)に捉えるための速い跳躍運動です。文字から文字へ目を移すときがその例です。アンチサッケードは、現れた目標とは反対の方向へ意図的に視線を跳ばす運動です。
  • 滑動性追従眼球運動:鳥やボールなど動く目標を、頭を動かさずに目で追う運動です。
  • 固視:一点に視線を保つことです。このときも目は、マイクロサッケード、ドリフト、トレモアと呼ばれる小さな動きを続けています。
  • 輻輳開散運動:近くや遠くを見るために、両眼が互いに反対方向へ、内側または外側に向く運動です。詳しくは両眼視と両眼の協調のガイドで解説しています。
  • 前庭動眼反射(VOR):視線安定化エクササイズの基礎です。頭が動くと、目が同じ速さで反対方向に動き、周りの景色がはっきり安定して見えます。

眼球運動の問題:症状と原因

眼球運動の問題は、脳震盪、脳卒中、内耳(前庭)の問題、両眼の協調の問題、その他の神経疾患に伴って起こることがあります。症状は原因によって異なります。

脳震盪後について、米国小児科学会(AAP)が眼科・視能矯正の団体と共同で出した2022年の声明は、読むことの困難、かすみ目、焦点を合わせにくい、読んでいる場所を見失う、読書中の目の疲れを挙げています。同声明は、子どもや10代の多くでは視覚症状は治療をしなくても4週間以内に消えること、脳震盪後の子どもと青年の最大25%〜33%でサッケードに異常があることを述べています。脳卒中後については、コクランレビューが、眼球運動障害は患者の70%以上に生じうるとし、読書や近くの作業、部屋を見渡すことが難しくなることがあるとしています。内耳の機能低下では、理学療法のガイドラインが、めまい、ふらつき、動揺視(動くと周りが揺れて見える状態)を挙げています。

読みについては、米国小児科学会が眼科・視能矯正の団体と共同で作成した2011年の報告書が、ディスレクシア(読み書き障害)の子どもの視覚と目の健康は他の子どもと変わらないとしています。読む方向を比べた2010年の研究は、珍しい眼球運動は読みの困難の原因というより、その結果である可能性が高いと結論づけました。

突然の複視、視力の低下、目の痛み、頭部外傷後の新しい症状がある場合は、エクササイズではなく、すぐに医師の診察を受けてください。

眼球運動の検査方法

眼球運動を調べる単一の検査はありません。2022年の脳震盪に関する声明は、診察で滑動性追従眼球運動、サッケード、VOR、輻輳近点、調節(ピント合わせ)を確認すべきだとしています。よく使われる検査には次のものがあります。

  • NSUCO:検者が眼球運動を観察して採点する、主観的な眼球運動検査です。2025年の研究では、子どものサッケードについてアイトラッカーと比較されました。眼科医療の専門家向けに、サッケード・追従・固視(英語)の臨床ガイドがあります。
  • DEM(Developmental Eye Movement test):縦と横に並んだ数字を読む時間を測る検査です。前述の2010年の研究の著者らは、読みが苦手な子どもの眼球運動の問題を診断するためにこの検査を使うべきではないとしています。臨床向けのDEMテスト(英語)のページをご覧ください。
  • King-Devick:カードに並んだ数字を読む時間を測る検査で、スポーツの脳震盪スクリーニングでよく使われます。
  • VOMS(Vestibular/Ocular Motor Screening):追従運動、サッケード、輻輳近点、VOR、動きへの過敏さを調べ、それぞれで症状が出るかを記録します。臨床向けの記事で脳震盪後の眼球運動(英語)と注視の安定性とVOR検査(英語)を解説しています。
  • アイトラッキング(視線計測):カメラを使ったシステムで、読書中も含めて、目がどこを向いているかを刻々と記録します。臨床向けには読書中のアイトラッキング(英語)と、当社の臨床用アイトラッキングプラットフォームOptics Tracker(英語)をご覧ください。

健康な成人のサッケード・追従運動トレーニング

2004年のレビューは、サッケード適応について説明しています。跳躍運動のたびに目標をこっそり動かすと、誤差を減らすようにサッケードの大きさが少しずつ変わります。通常は完全には変わりませんが、その変化は暗闇でも保たれます。

2005年の研究では、30人が2週間毎日1つの課題を練習しました。アンチサッケードを練習した人は、反応が遅くなることなくアンチサッケードの誤りが減りました。通常のサッケードを練習した人はアンチサッケードの誤りが増え、固視を練習した人には変化がありませんでした。健康な成人23人を対象にした2015年の研究では、2週間毎日アンチサッケードを練習すると反応が速くなり、誤り率は変わりませんでしたが、跳躍が目標の手前で止まる度合いが大きくなりました。

2012年の研究では、健康な成人10人が、ランダムに動く目標を追う6分間のセッションを3日間、1日2回ずつ行い、5日後も追従運動がよい状態を保っていました。代わりに休憩をとった成人10人では、この向上は見られませんでした。これらの研究が測ったのは練習した眼球運動そのもので、読書やスポーツ、日常生活ではありません。

子どもの読みと眼球運動トレーニング:研究の結果

以下の読みに関する結果は、各研究の報告どおりに記載しています。眼科医療の専門家向けに、読書中のアイトラッキング(英語)の臨床記事があります。

医学団体はこの点について見解を示しています。米国小児科学会、米国眼科学会、AAPOSなどによる2009年の共同声明は、視覚の問題が原発性ディスレクシアの原因になることはないとし、学習障害に対する目のエクササイズを支持していません。2011年の報告書は、学習障害の治療として眼球の追従・トラッキング訓練を支持するエビデンスはないとし、ディスレクシアの治療は言語スキルを対象にすべきだとしています。2009年の声明への反論が、学術誌Optometryに掲載されました。

子どもの眼球運動トレーニングと読み
研究デザイン対象実施内容追跡期間主な結果
Fischer 2000トレーニング前後の比較研究ディスレクシアと眼球運動の問題がある8〜15歳の子ども85人携帯型機器を使った固視とサッケードの課題を毎日自宅で実施3〜8週間サッケードの制御が向上し、対照群との統計的な差がなくなった。抄録に読みの結果の記載なし
Leong 2014単盲検ランダム化クロスオーバー試験小学生学校でKing-Devickのサッケードソフトを1回20分、週3日6週間トレーニング後の音読の流暢さが対照群より高かった
Dodick 2017ランダム化クロスオーバー試験小学1・2年生327人King-Devickのセッションを1回20分で18回5週間流暢さは6.2%向上(対照群3.6%)、読解は7.5%向上(対照群1.5%)
Peyre 2018ランダム化クロスオーバー試験ディスレクシアのある7〜12歳の子ども11人サッケード、輻輳開散、注意のコンピュータートレーニング3か月後と6か月後読みへの効果なし。他のスキルへの短期的な効果と、書字の1項目への後の効果あり。著者らは解析を探索的なものとした
CITT-ART 2019ランダム化プラセボ対照試験輻輳不全のある9〜14歳の子ども310人通院での輻輳開散・調節訓練、またはプラセボ訓練16週間読解やその他の読みの検査に有意差なし
Facchin 2025非ランダム化パイロット研究(群は参加可能性で決定)読みが苦手な7〜12歳の子ども21人通院でのサッケードトレーニング(14人)または読みの練習(7人)6週間読みが向上したのはサッケードトレーニング群のみ

脳震盪・めまいに対する眼球運動エクササイズ

脳震盪後には、セラピストや眼科医療の専門家が眼球運動や前庭のエクササイズを用いることがあります。2022年の脳震盪に関する声明は、「視覚症状だけを単独で治療することを支持する質の高いエビデンスが不足している」としています。また、2つのランダム化試験が、バランスと前庭・眼球運動の問題に対する積極的なリハビリテーションが症状のある患者に役立つという初期のエビデンスを示しているとし、さらに研究が必要だとしています。ブロックストリングスのエクササイズのガイドでは、輻輳の練習に関する2025年の脳震盪の試験を紹介しています。

内耳の問題によるめまいについて、2015年のコクランレビューは39件の研究(2,441人)を含めました。4件の研究(565人)の統合データでは、前庭リハビリテーションのほうが対照よりめまいの頻度が低く、著者らはエビデンスを中程度から強いと表現しました。BPPV(良性発作性頭位めまい症)では、短期的には頭位変換法のほうが効果がありました。2022年の米国理学療法士協会(APTA)のガイドラインは、強いエビデンスを根拠に、臨床医は前庭リハビリテーションを提供すべきであり、頭を動かさずに行うサッケードや追従のエクササイズを注視の安定性の向上に用いるべきではないとしています。

脳卒中後については、2011年のコクランレビューで見つかったのは28人(うち脳卒中は5人)を対象にした薬の試験2件だけで、目のエクササイズの試験はなく、よく設計された試験が求められました。スポーツでは、2012年の報告で、大学野球チームの打率がビジョントレーニングを1シーズン行った後に0.251から0.285に上がりました。

脳損傷後の眼球運動・前庭トレーニングの研究
研究デザイン対象実施内容追跡期間主な結果
Schneider 2014ランダム化比較試験スポーツによる脳震盪後にめまい、首の痛み、頭痛が続く12〜30歳の31人週1回の理学療法。1群は首と前庭の療法も追加8週間競技復帰の許可:療法追加群73%(15人中11人)、追加なし群7%(14人中1人)
Kontos 2021二重盲検ランダム化比較試験脳震盪から21日以内の12〜18歳の10代55人(50人が完了)自宅での前庭エクササイズ、または活動と生活習慣のアドバイスを1日30分4週間VORのスコアは前庭エクササイズ群でより向上。動きへの過敏さの差は有意でなかった
Kleffelgaard 2019単盲検ランダム化比較試験軽度〜中等度の脳損傷とめまいのある成人65人集団での前庭リハビリテーション、または対照約3か月後と4か月後1回目の評価ではめまいのスコアが良好、2回目では差なし
Thiagarajan 2014プラセボ対照研究(各人が両方を実施)軽度の脳損傷と近見時の症状がある成人12人固視、サッケード、模擬読書のトレーニング、またはプラセボを1回45分、週2回それぞれ6週間固視、サッケード、模擬読書の指標がトレーニング後に向上し、プラセボ後には向上せず
Ciuffreda 2008後ろ向きの診療記録調査訓練を終えた軽度脳損傷の33人と脳卒中後の7人眼球運動の問題に対する通院でのビジョントレーニング終了から2〜3か月後クリニックの症状・所見の基準で、成功率90%と100%

Optics Trainer の位置づけ

Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、ゲーム形式の視覚・脳トレーニングアプリです。Drills タブには、目で見て追うドリルがあり、スコアはつきません。Saccades のドリルは前述のサッケード課題をモデルにしており、Pursuits のドリルは滑動性追従運動の研究と同じ種類の課題を使っています。Eye Stabilization は固視のドリルで、中央の点に視線を保っている間、前面カメラの映像から左右それぞれの目の動きが2本の列にリアルタイムで描かれます。Peripheral Awareness のドリルも、中央の目印に視線を保ちながら、離れた位置の目標に気づく練習です。どのドリルも頭を動かさずに行うため、視線安定化(VOR)のエクササイズにはあたらず、アンチサッケード課題もありません。アプリの画面は日本語に対応しています。

Optics Trainer は、ここで紹介したどの研究にも使われていません。Eye Stabilization の軌跡は練習用で、臨床検査ではありません。Optics Trainer は治療や診断ではなく、FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。臨床での眼球運動の記録については、クリニック向けサイトのOptics Tracker(英語)をご覧ください。脳震盪や脳卒中の後、またはめまいがある場合は、必ず担当の医療者の計画に沿って使ってください。エクササイズ中に頭痛、目の痛み、複視が出たら、中止して担当の医療者に連絡してください。目のトレーニングとビジョントレーニングの効果の確かめ方のガイドもご覧ください。

Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。モバイル版とウェブ版は、App Store では月額 ¥2,500(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。スマートフォン・タブレットのアプリは7日間の無料体験から始められ、無料のウェブアカウントでは1日3回プレイできます。VR版は7日間の無料体験の後、Meta Quest Store で現地通貨の価格が表示されます。

Optics Trainer のドリルと、このガイドの眼球運動
ガイドでの項目Optics Trainer の機能やること
サッケードSaccades ドリル:Jump、Directional Jump、Center Out、Rapid Focus、Tile目標から次の目標へすばやく視線を移す
滑動性追従運動Pursuits ドリル:Zigzag、Lines、Bounce、Free Flow、Marsden Ball、Near and far頭を動かさずに、動く目標をなめらかに目で追う
固視Eye Stabilization中央の点に視線を保ち、左右それぞれの目の動きをリアルタイムの軌跡で見る
固視Peripheral Awareness ドリル:Side View、Wide View、Peripheral Tracking、Peripheral Flashes中央の目印に視線を保ちながら、離れた位置の目標に気づく

Optics Trainer をダウンロード

ダウンロード無料。アプリは7日間の無料トライアル付き。ブラウザでは1日3回まで無料でプレイできます。

よくある質問

眼球運動トレーニングとは?

目標間で視線をすばやく移す(サッケード)、動く目標を追う(滑動性追従運動)、一点を見つめ続ける(固視)、場合によっては頭を動かしながら目標に視線を保つ(視線の安定化)、といった動きを練習する課題です。

サッケード訓練の目的は?

サッケードの訓練は、目標間ですばやく正確に視線を跳ばす練習です。アンチサッケード課題では、現れた目標から視線をそらします。30人を対象にした2005年の研究では、2週間毎日アンチサッケードを練習すると、反応が遅くなることなくアンチサッケードの誤りが減りました。

追従眼球運動のトレーニングとは?

頭を動かさずに、動く目標を目で追う練習です。2012年の実験室での研究では、動く目標を追う練習を3日間行った健康な成人10人は、5日後も追従運動がよい状態を保っていました。

眼球運動の問題にはどんな症状がある?

報告されている症状には、読んでいる場所を見失う、目の疲れ、かすみ目、焦点を合わせにくい、また内耳の問題ではめまいや、動くと周りが揺れて見えることがあります。突然の症状や頭部外傷後の症状は、すぐに医師の診察を受けてください。

眼球運動の問題は読みの困難の原因になる?

2011年の米国小児科学会の報告書は、ディスレクシアの子どもの視機能は他の子どもと同じであり、学習障害の治療として追従・トラッキング訓練を支持するエビデンスはないとしています。サッケードトレーニングの研究には、読みの向上を報告したものもあれば、ディスレクシアを対象にした2018年の試験のように読みへの効果がなかったものもあります。

脳震盪やめまいに眼球運動エクササイズは役立つ?

症状が続く若者31人を対象にした2014年の試験では、首と前庭の療法を追加した人の73%が8週間以内に競技復帰を許可され、追加しなかった人では7%でした。内耳によるめまいでは、39件の研究を含むコクランレビューが、そのうち4件の統合データで前庭リハビリテーションによりめまいの頻度が低かったと報告しています。理学療法のガイドラインは、頭を動かさないサッケードや追従のエクササイズを注視の安定性の向上に用いるべきではないとしています。

眼球運動トレーニングに効果はある?

研究ごとに測ったものが異なります。健康な成人では、練習した眼球運動が変化しました。脳震盪と前庭の試験では、症状と競技復帰の変化が報告されました。子どもの読みの研究では、向上を報告したものと効果がなかったものがあり、2011年の医学的声明は学習障害に対するこれらのエクササイズを支持していません。

出典

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