ビジョントレーニングの効果確認:進捗の評価方法
更新日
公開された研究をもとに Optics Trainer チームが執筆しました。出典はすべて下記にリンクしています。
ビジョントレーニング(視能訓練)は効果が出ているのでしょうか。どんなプログラムでも数週間たつと浮かぶもっともな疑問ですが、感覚だけで答えるのは難しいものです。症状は練習とは関係のない理由で軽くなることがありますし、目の働きに本当の変化があっても、日々の中では見えないことがあります。このガイドでは、眼科の専門家がビジョントレーニングの進捗をどう評価するか、主な試験でプログラムがどれくらいの期間行われたか、症状と測定値が一致しないことがある理由、治療をやめた後に何が起こるか、そして計画の変更を相談するとよいタイミングを説明します。どのプログラムもあなたに効果があると約束するものではありません。
ビジョントレーニングの効果は?まず何を測るかから
進捗の意味は、状態によって異なります。近くを見るときに両目を一緒に内側に寄せにくい輻輳不全(CI)では、専門家は症状と、測定した両眼の協調の能力を見ます。弱視では、主な指標は弱い方の目が視力表で何行読めるかです。各状態について試験で何がわかったかは、ビジョントレーニングに効果はあるかのガイドで紹介しています。
大切なのは2種類の根拠です。なお、眼球運動を客観的に測定したい臨床家向けには、私たちの臨床用アイトラッキングプラットフォーム Optics Tracker(英語) があります。
- 症状:目の疲れ、頭痛、複視、読んでいる場所を見失うなど、ご自身やお子さんが気づくこと。CI の試験では、質問票で点数化されます。
- 徴候:目をどこまで近くに寄せられるか、両眼の協調の幅がどれくらいあるか、視力表での視力など、専門家が診察室で測るもの。
ビジョントレーニングにかかる期間:試験での期間
答えは1つではなく、ご自身のプログラムにどれくらいかかるかを教えてくれる試験はありません。研究からわかるのは、各プログラムがどれくらいの期間行われ、いつ結果が確認されたかです。
| 研究 | 対象 | プログラム | 進捗を確認した時期 |
|---|---|---|---|
| CITT(2008年) | CI のある9〜17歳の子ども | 12週間 | 4週後、8週後、終了時 |
| CITT-ART(2019年) | CI のある9〜14歳の子ども | 16週間の通院訓練またはプラセボ | 16週時点 |
| CONCUSS(2026年) | 脳振盪後に CI のある11〜25歳 | 週2回、計16セッション | 6週後と16セッション後 |
| PEDIG アイパッチ(2003年) | 中等度の弱視のある7歳未満の子ども | 1日2時間または6時間のアイパッチ | 4か月時点 |
| PEDIG 眼鏡のみ(2006年) | 未治療の不同視弱視のある3歳以上7歳未満の子ども | 新しい眼鏡のみ | 視力の改善が止まるまで5週ごと |
| PEDIG iPad ゲーム(2016年) | 弱視のある5〜12歳の子ども | 16週間 | 4、8、12、16週時点 |
輻輳不全で専門家が進捗を評価する方法
CITT の試験では、次の3つを合わせて進捗が判断されました。
- 症状:輻輳不全症状調査票(CISS)を使います。15の質問からなり、点数は0〜60で、高いほど症状が多いことを示します。CITT では、16点未満で症状がなくなったとみなし、10点以上下がれば改善とみなしました。
- 輻輳近点(NPC):ターゲットが二重に見えたり、片目が外にずれたりするまでに、どこまで鼻に近づけられるか。CITT では6 cm未満が正常でした。
- 正の融像性輻輳(PFV):プリズムで難しくしていく中で、像を1つに保つために目をどれだけ内側に寄せられるか。CITT では、15プリズムジオプトリーを超える値と、シェアードの基準と呼ばれる標準的な比較ルールを合わせて正常としました。
症状と測定値が一致しないことがある理由
楽になることが目標ですが、それは練習が効いた証拠ではありません。CITT の試験では、プラセボの通院訓練のグループの子どもたちも症状が減ったと報告しており、CISS の平均点は12週間で7.8点下がりました。
CITT-ART の試験では、通院訓練はプラセボより測定上の徴候を大きく改善しました。輻輳近点は訓練で10.4 cm、プラセボで6.2 cm改善し、両眼の協調の幅は訓練で23.2プリズムジオプトリー、プラセボで8.8上がりました。しかし症状スコアは両グループでほぼ同じくらい改善し、訓練で11.8点、プラセボで10.4点で、その差は統計的に有意ではありませんでした。研究者らは、研究チームを喜ばせたいという気持ち、プラセボ効果、あるいは2つのプログラムに共通する部分が理由として考えられるとし、成功を判断するのに「CISS だけを使うのは賢明ではないかもしれない」と書いています。
体調を聞かれるだけでなく、徴候を測り直してもらうよう担当の専門家に頼むこともできます。
弱視の進捗の確認と、治療をやめた後に起こること
弱視について、米国眼科学会(AAO)の2023年の弱視の診療ガイドライン(Preferred Practice Pattern)は、最初の経過観察の受診は、治療と子どもの年齢に応じて、通常は治療開始から2〜3か月後としています。その受診の主な目的は、弱い方の目の視力を測ることです。専門家は、計画がどれくらい守られているかも尋ね、副作用がないかを確認し、強い方の目が引き続き問題ないことを確かめます。
進捗には時間がかかることがあります。未治療の不同視弱視(左右の目の度数に大きな差がある状態)のある子どもを対象に、眼鏡のみの効果を調べた2006年の PEDIG 研究では、77%の子どもで視力が2行以上改善し、改善が頭打ちになるまで最長30週かかりました。2003年の PEDIG のアイパッチの試験では、アイパッチに1日1時間以上の近くを見る活動を組み合わせ、1日2時間でも6時間でも、4か月後に視力が平均2.4行改善しました。
得られた効果が後退することもあります。2004年の PEDIG 研究では、治療が成功して終了した145人の子どもを追跡し、1年以内に24%で弱視が再発しました。1日6〜8時間アイパッチをしていた子どもでは、まず1日2時間に減らしてからやめた場合より、急にやめた場合のほうが再発が多くみられましたが、この研究は観察研究でした。いつ、どのように治療を減らすかは、担当の専門家が決めることです。その後の PEDIG の解析は、弱視の治療を受けたすべての子どもに、注意深い長期の経過観察が必要だと結論づけています。
CI については、CITT の追跡調査で、症状の軽減が続いたかどうかが調べられました。CITT の追跡調査では、通院訓練の後に症状がなくなった子どもの84.4%が、1年後も症状がないままでした。この追跡調査の自宅訓練群とプラセボ群は少人数でしたが、著者らは、自宅プログラムの後に症状がなくなった子どもでも同様の結果が示唆されるとしています。
計画の変更を相談するタイミング
弱視のガイドラインは、具体的な例を挙げています。約3か月たっても視力が改善せず、検査の信頼性があり、治療も行われている場合、専門家は治療を続けるか増やすか、別の方法を試すことがあります。治療がよく守られているのに視力が改善しない場合は、視力低下の原因がほかにないかを検討すること、視力が悪化した場合は、視力を測り直し、眼鏡の度数を確認し直し、治療が行われていることを確かめることとしています。
大人については、標準的な期間はありません。2020年のコクランレビューでは、CI の治療に関する大人の試験は6件しかなく、バイアスのリスクが低いものは1件だけで、大人についての根拠は子どもの根拠より明確でないとしています。
経過観察の受診に持っていくとよい質問は次のとおりです。
- 始めてから、どの測定値がどれくらい変わりましたか?
- 実際に行っている練習の量は、この計画にとって十分ですか?
- 続けるか、変えるか、やめるかはいつ決めますか?
- やめる場合、効果が保たれているかをどう確認しますか?
- 新たな複視や頭痛など、次の受診を待たずに連絡すべきことは何ですか?
Optics Trainer の位置づけ
はっきりさせておきたい点が1つあります。トレーニングアプリのスコア、レベル、連続記録は、臨床的な指標ではありません。両眼用 iPad ゲームを使った2016年の PEDIG 試験では、ゲームのログファイルで子どもたちがどれくらいプレイしたかがわかり、ログデータのある子どものうち、割り当てられたプレイの4分の3以上を行ったのは22.2%だけでした。しかし、視力が改善したかどうかは、クリニックの視力表で判断されました。プログラムが効果を上げているかどうかを教えてくれるのは、担当の専門家の測定です。
Optics Trainer は、iPhone、iPad、Android、ウェブブラウザ、Meta Quest で使える、ゲーム形式の視覚・脳トレーニングアプリです。Motor Fusion は両眼の協調のゲームで、ペアの画像がゆっくり離れていき、2つに分かれたところでタップします。タップした位置は練習の結果であり、融像性輻輳の測定値ではなく、プリズムによる検査の代わりにはなりません。Optics Trainer は臨床的な進捗を記録するものではなく、治療や診断でもありません。FDA の承認(クリアランス)を受けておらず、日本で医療機器として承認されたものでもありません。また、上で紹介した研究で使われたものでもありません。臨床で眼球運動を測定したい専門家は、Optics Tracker をご覧ください。専門家の計画の一環として自宅で安全に練習する方法は、自宅でのビジョントレーニングのガイドをご覧ください。アプリの画面は日本語に対応しています。
Optics Trainer は専門家による診断や処方された治療の代わりにはなりません。ご自身の状態については、眼科医や視能訓練士などの専門家にご相談ください。担当の専門家が自宅での練習を計画に取り入れてよいと判断した場合、モバイル版とウェブ版の料金は、App Store では月額 ¥2,500 です(Google Play とウェブ版は購入時に価格が表示されます)。年間プランもあります。スマートフォン・タブレット版アプリは7日間の無料体験から始められ、無料のウェブアカウントでは1日3回までプレイできます。VR 版は7日間の無料体験の後、Meta Quest Store で現地通貨の価格が表示されます。
Optics Trainer をダウンロード
ダウンロード無料。アプリは7日間の無料トライアル付き。ブラウザでは1日3回まで無料でプレイできます。
よくある質問
ビジョントレーニングの効果が出ているかはどうすればわかりますか?
診断のきっかけになった徴候を測り直してもらうよう、担当の専門家に頼みましょう。輻輳不全なら輻輳近点や両眼の協調の幅、弱視なら視力表での視力などです。楽になることも大切ですが、輻輳不全の試験ではプラセボでも症状が改善しました。
ビジョントレーニングの効果が出るまでどれくらいかかりますか?
状態や人によって異なります。主な輻輳不全の試験では、プログラムは12週間(CITT)と16週間(CITT-ART)でした。弱視の試験では約4か月で結果が確認され、眼鏡のみの場合は改善が頭打ちになるまで最長30週かかりました。
大人のビジョントレーニングにはどれくらいかかりますか?
標準的な答えはありません。試験の参加者の多くは子どもで、2020年のコクランレビューは大人についての根拠は明確でないとしています。脳振盪後に輻輳不全のある25歳までの人を含めた CONCUSS 試験では、週2回の通院セッションを16回行いました。
子どものビジョントレーニングにはどれくらいかかりますか?
輻輳不全を対象にした CITT の試験では、子どもたちは12〜16週間の訓練を受けました。弱視については、AAO のガイドラインは治療開始から2〜3か月後に最初の経過観察を勧めており、その後の受診で治療を続けるか、変えるか、徐々に減らすかを決めます。
ビジョントレーニングの効果はなくなることがありますか?
あります。弱視では、ある PEDIG 研究で、治療が成功した子どもの約4分の1が治療をやめてから1年以内に再発したため、経過観察の受診が大切です。輻輳不全では、CITT の追跡調査で、通院訓練の後に症状がなくなった子どもの84.4%が1年後も症状がないままでした。
ビジョントレーニングの効果がない場合はどうすればよいですか?
次の受診で相談しましょう。担当の専門家は、練習が計画どおりに行われているかを確認し、眼鏡を確認し直し、目を測り直し、治療を変更したり、ほかの原因を探したりできます。弱視については、AAO のガイドラインは約3か月たっても視力が改善しない場合に計画を見直すことを勧めています。
視覚のゲームでスコアが上がれば、目が良くなっているということですか?
それだけではわかりません。ゲームのスコアはゲームでの成績を示すもので、目の働きを示すものではありません。見え方や両眼の協調が変わったかどうかは、眼科の専門家が診察室で測るものです。
出典
- CITT Study Group. Randomized clinical trial of treatments for symptomatic convergence insufficiency in children. Arch Ophthalmol. 2008
- CITT Study Group. Long-term effectiveness of treatments for symptomatic convergence insufficiency in children. Optom Vis Sci. 2009
- CITT-ART Investigator Group. Treatment of symptomatic convergence insufficiency in children enrolled in the Convergence Insufficiency Treatment Trial-Attention & Reading Trial: a randomized clinical trial. Optom Vis Sci. 2019
- Alvarez TL, Scheiman M, et al. CONCUSS randomised clinical trial of vergence/accommodative therapy for concussion-related symptomatic convergence insufficiency. Br J Sports Med. 2026
- Scheiman M, et al. Interventions for convergence insufficiency: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2020
- Repka MX, Beck RW, Holmes JM, et al. A randomized trial of patching regimens for treatment of moderate amblyopia in children. Arch Ophthalmol. 2003
- Cotter SA, et al. Treatment of anisometropic amblyopia in children with refractive correction. Ophthalmology. 2006
- Holmes JM, Manh VM, Lazar EL, et al. Effect of a binocular iPad game vs part-time patching in children aged 5 to 12 years with amblyopia. JAMA Ophthalmol. 2016
- Cruz OA, Repka MX, et al. Amblyopia Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2023
- Holmes JM, Beck RW, Kraker RT, et al. Risk of amblyopia recurrence after cessation of treatment. J AAPOS. 2004
- Holmes JM, Melia M, Bradfield YS, et al. Factors associated with recurrence of amblyopia on cessation of patching. Ophthalmology. 2007
関連ガイド
Optics Trainer で両眼の協調を練習する
Optics Trainer の両眼の協調のゲームでは、奥行きが変わる中で両目を一緒に働かせます。輻輳と開散のレベルは調整でき、スマートフォン、タブレット、ウェブ、Meta Quest で使えます。自宅での練習が計画に合うかどうかは、眼科の専門家にご相談ください。スマートフォン・タブレット版アプリは7日間の無料体験から始められます。
無料で始める